釣り_008
写真出典 http://kenfraser.ca/

こんにちは、Anejo(アネホ)です。

タイトルの画像は、ケン・フレイザー(Ken Fraser)によって 1979年 10月 26日にカナダのノバ・スコシア(Nova Scotia)で釣り上げられたクロマグロの世界記録(1496ポンド = 679kg)で、今(2018年 1月 25日現在)でも破られてません。

さて、日本では毎年恒例の『築地の初競り』、今年は 1月 5日に青森県大間産の 405kg のクロマグロが、3645万円(キロ当たり 9万円)で競り落とされて話題になりましたね~、これは立派!

釣り_009
写真出典 https://hdk-prod-static-contents.s3.amazonaws.com/

一方、昨年まで 6年連続で最高額のマグロを競り落としていた、すしチェーン『すしざんまい』の運営会社『喜代村』は、190kg の大間産を 3040万円(キロ当たり 16万円)で落札したそうですね。

釣り_010
写真出典 https://i2.wp.com/

『マグロ 1匹の価格』で勝負するのか、『キロ当たりの価格』で勝負するのか?は価値観の違いのような気もしますが、『クロマグロについて見逃せない問題』について書いていこうと思います。


マグロの種類

まず最初に、今みなさんの食卓を賑わしている『マグロ』にどんな種類があるんでしょう?

◆ 太平洋クロマグロ
◆ ビンナガマグロ
◆ メバチマグロ
◆ ミナミマグロ
◆ 大西洋クロマグロ
◆ 大西洋マグロ
◆ キハダマグロ
◆ コシナガマグロ

ミトコンドリア DNA から分類すると、上記のように 8種類のマグロの仲間が居ます。

この中で、『マグロの王様』と呼ばれている『太平洋クロマグロ』『大西洋クロマグロ』に焦点を当てて考えていきます。


太平洋クロマグロと大西洋クロマグロ

本マグロとも呼ばれてますが、『クロマグロ』は、刺し身や寿司ネタとしては最高の魚ですね。

そして我々が普段『クロマグロ』と言うと、近海産の『太平洋クロマグロ』の事をイメージする人が多いんじゃないでしょうか?

一方、この他に『大西洋クロマグロ』というのも居て、マグロ需要の高い日本には、世界中からこの大西洋クロマグロも輸入されてきてますが、ご存知でしたか?

まだ研究されつくされてるワケじゃないですし、『諸説あり』なのでナンとも言えませんが、この『太平洋クロマグロ』と『大西洋クロマグロ』、見た目は多少の違いはあるものの似ているので、単純に生息域が違うだけかな?と言えばそうでは無く、DNA レベルでは全く別種のようです。

ここではこれ以上突っ込んだ話は避けますが、『太平洋クロマグロと大西洋クロマグロは違う魚』という事だけは理解しておいてください。


太平洋クロマグロは絶滅危惧種

我々日本人には馴染みの深いこの『太平洋クロマグロ』ですが、国・各国の省庁・NGOなどを会員とする世界最大の自然保護の連合体『国際自然保護連合』(IUCN)のマグロ類専門家グループ部、ブルース・コレット会長が、2014年 11月 17日の発表文で

「中西部太平洋で保護を進めなければ、短期的な状況の改善は望めない」

と警告、太平洋クロマグロを『絶滅危惧種』として『レッドリスト』に掲載してから今日に至ります。

つまり、2014年から

「保護しないと絶滅する」

と警告されてた、というワケです。

それを、もう何年も食べ続けてる日本人って、『世界の笑いもの』ですね。

百歩譲って、絶滅させない数だけ獲って食べる、という事ならどうなんでしょう?


絶滅させない『数』ってどんくらい?

海の中の話なのに、「ここまで獲っても大丈夫」だなんて話、誰が出来るんでしょう?

そもそも『神のみぞ知る』みたいな数字を考えても、1ペアの親魚から一体どれだけの子供が生まれてまた親になり増やしていけるか、自然界の中で「何ペア残ってれば絶滅しない」と言い切ろうとする事が不毛です。

なので、保護を考える時、世界各国の人達と共通の尺度をもって

「じゃぁまず最初に資源量に目標を作ろう」

という事になるワケです。


初期資源量比

この、『保護』を話し合う場として『中西部太平洋まぐろ類委員会』(WCPFC)という団体があって、そこで『マグロを獲らなかったらどこまで親魚が増えるか?』と予測した数(初期資源量)に対して、今どの位の数なのか?を調べて、

「保護して、ここまで増やそうよ!」

という目標を決めてるんです。

つまり、初期資源量に対して何%を目指そう、という話し合いをする場なんですが、今まで日本がワガママ言ってその目標をメチャクチャ低くさせてきた経緯があります。


太平洋クロマグロの目標値

基本的に、この目標値は 50%です(下のグラフの緑色の線)。

そして 20%オレンジ色の線)を下回ると、「極めて厳しい措置を導入すべき」と言われています。

ところが、太平洋クロマグロだけは 7%赤色の線)が目標値。

そして茶色の折れ線が親魚の資源量を示してますが、最新の調査報告では、2014年で僅か 2.6%の水準にまで減少してます。

釣り_011-1
出典 REPORT OF THE PACIFIC BLUEFIN TUNA WORKING GROUP

そもそも、普通は 20%を目標にするハズが何故 7%だったのか?


日本の主張

元々、数年前から「2030年を目途に初期資源量比を 20%までに資源回復を目指そう」と、米国に繰り返し提案されてきてたんですが、日本はこれに対し「初期資源量比 20%という数字は余りにも高過ぎて非現実的だ」と頑なに拒否し続けたという経緯があります。

しかしこの場では、WCPFC条約の規定で、コンセンサス(全会一致)でしか勧告を行うことができないため、日本だけでも反対し続ければ、何の決定もできません。

結局、日本の主張に基づいて、「2024年までに、1950年代~現在までの資源量の中間値となる、初期資源量比 7%までに回復させる」という『暫定回復目標』しか設定することができなかったのです。

上のグラフを見れば一目瞭然ですが、1950年代から今までず~っと、本来目標とされてる 50%という数字は達成する気が無さそうな資源管理をしてきたようですね。

そして「危険だぞ!」と言われてる 20%さえ 1959年 ~ 1962年の期間だけ達成されてるという寂しい結果です。

本来は茶色の折れ線がオレンジ色の線の上を推移してないといけないんですがね。

それを日本は「高すぎる」「非現実的」と言う理由が訳わかりません。

ましてや 7%の目標ですら最近は達成出来ず、2 ~ 3%周辺をウロウロしてるのが現実です。


『根こそぎ』のまき網漁

マグロ漁にはいくつか種類がありますが、

◆ まき網
◆ はえ縄
◆ ひき縄
◆ 竿釣り
◆ 定置網
◆ 一本釣り

などがあって、それぞれに特色があります。

この中で『まき網』というのが有りますが、これは高性能の魚群探知機でマグロの群れを探し当て、産卵のために群れの動きが止まった瞬間に巨大な網で一網打尽に獲るという方法です。

根こそぎですね。

釣り_012
写真出典 http://webronza.asahi.com/

この漁法は狙った魚の大きさを選ぶことが出来ず、デカいのも小さいのも獲れてしまいます。

しかも大掛かりなため『産卵期じゃないと獲りにくい』ので、一本釣りなどの零細漁師たちが資源確保の為に産卵期のマグロ漁を自粛してるにも拘らず、獲りまくります。

この『まき網漁』はとても効率良くマグロが獲れるため、大手水産メーカーが多額の資金を費やして専用の『まき網船』を建造、我先にマグロ漁場で獲りまくります。


親魚に成長するまで長い

クロマグロは、比較的成長の遅い魚と言われてます。

地域の違いでも成長の速さが違うらしいですが、一般的に

◆ 3歳(35kg 前後)の 2割が親魚に成熟
◆ 4歳(58kg 前後)の 5割が親魚に成熟
◆ 5歳(85kg 前後)以上の 10割が親魚に成熟

と言われてます。

単純に『漁獲制限』をトン数で制限する場合、小さいマグロをたくさん獲るか、大きいマグロを少し獲るか?といった所が争点となってくると思いますが、重量が同じなら小型魚を残す方が将来の親魚がより多く増えると ISC は試算してるそうです。


境港のまき網漁獲の平均サイズ

日本海で産卵期に獲れたクロマグロのほとんどは境港に水揚げされますが、その平均サイズの推移を見ると、段々小さくなってきてる事がわかります。

釣り_013

つまり、境港のデータを見ると、年々平均サイズが下がってきて、ISC の試算の真逆を行ってる事になるワケです。

2014年は 36kg 程度ですから、まだ 3歳魚の赤ちゃんですね。

この小型化する傾向はこのまま続くかもしれませんが、一定のサイズに達すると突然『獲れなくなる』可能性がありますね。


漁獲枠の争奪戦

そして日本の場合、漁獲枠というのは個人ではなく、漁法別に定められてるので、シーズンに入ったら小さいマグロでも構わず何でも我先に獲りまくり、上限に達するまで凄い競争になってしまいます。

みんなで競争して獲りまくるから、獲れすぎたマグロは値崩れを起こすので、漁業者自身にもメリットは無いですが、そうは言っても競争相手が先に枠全部を獲ってしまうので、やっぱり競争に参加する事になります。

海外の場合は個別に枠が設けてあるので、他人がいつ獲っても慌てること無く、マグロが美味しい時期、値崩れしてない頃を見計らって獲ればいいんです。


2017年の WCPFCの新規制

2017年 12月 8日、WCPFCの年次会合において、太平洋クロマグロについて、資源量に応じて漁獲枠を調整できる新規制を決めました。

具体的には、

「2024年までに現在の 2倍以上の約 4万トンに増やす目標を掲げる」

だそうです。


前回までの暫定目標とどう変わった?

でも、現在が 1万 6千トン強で、初期資源量比が 2.6%という状況ですから、それを 4万トンに増やしたとしても、依然として 6%チョットなワケで、全然安心できるレベルじゃないと思うんですよね。

安心できるレベルは何度も言ってますが、20%以上じゃないですか?

「2024年までに、初期資源量比 7%までに回復させる」

と以前言ってた暫定目標の 7%を下方修正した感じですね。


新ルールの合せ技

ただし、資源調査の結果、

「この目標が達成できる確率が 75%を超えれば漁獲枠の拡大を検討、逆に 60%を下回れば減らす」

という新ルールが追加されてます。
なお、この適用は 2018年では間に合わず、2019年になるらしいですね。

つまり、今年については何も変えず乱獲は続き、資源枯渇のリスクは増え続ける、という事。

そして、この『しょーもない』目標値を達成出来る確率次第では更に資源枯渇のリスクが更に増えるという事ですね。

この新決定について、斎藤健農林水産相は 8日の閣議後の会見で

「責任ある漁業国として議論を主導した結果だと認識しており、大きな前進だと受け止めている」

と述べたそうですが、世界中の理解を得られてるんでしょうか?笑


養殖マグロ

最近は天然資源がヤバいとなれば、「養殖モノにすればいいじゃん!」という意見もあり、確かに天然マグロを絶滅させずに、将来にわたってマグロを食べ続ける事が出来そうな気がします。

でもこれにも大きな落とし穴があります。


エサは天然モノというオチ

そう、マグロを育てるには栄養満点のエサが必要ですが、それは天然モノなんですね。

養殖の縮小版?みたいに熱帯魚を飼ってるとわかりますが、エサは天然モノの小魚や甲殻類をミンチにして粒上に固めたものです。

大量のマグロを育てるためにはやはり大量の天然モノの小魚が必要で、それも『まき網』で獲ってたりします。笑

それじゃ、その小魚も養殖すればいい!となると、小魚のエサのプランクトンを増やさないといけませんね。

プランクトン増やしすぎると酸欠で全滅しますが、何か良い手は無いでしょうか?


まとめ

消費者は、マグロが『無限だ』と思いこんでます。
いや、あまりに美味しいので、無限だと『思いたい』んでしょうね。

そしてマグロが安く手に入る事を手放しで喜んでますが、その安さの理由が『まき網』で獲りすぎて値崩れを起こしたから、という所まで気付いてる人がどれほど居るんでしょうか?

そして、クロマグロは絶滅危惧種である、という事実。
これを知っていて「美味しい」と喜んで食べてる日本人は世界の笑いものです。

たとえば産卵期は禁漁にするとか、漁業法別の漁獲枠でなく、個別の漁獲枠に変えるとか、漁獲枠を大幅に減らすとかすれば、数年で資源回復出来ると思うんですがね。

こういった不条理を見るにつけ、

「日本は釣り(漁業)後進国」

と思わざるをえないんです。

そして、日本が先進なのは、

「釣り道具と釣り方」

なんですね。。。

マグロを食べるの、しばらく封印してはいかがでしょうか?

 

この記事の内容が役に立ったと思ったら、記事をソーシャルメディアで共有していただけると嬉しいです。